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クレイン・トータス新聞

トータス新聞1面記事

自然と人工と生命と

2024-01-01
新聞
 新年明けましておめでとうございます
 本年もよろしくお願い致します

 年毎に発するこの言葉には、私たちに希望があることが表されます。「おめでとう」の中には、今年も一緒に頑張ろうとのメッセージが含まれている。仕事のこと、仲間のこと、家のこと、世界のできごと、人類のこと、夢、希望のこと、これから先のこと、今自分ができることなどなどが、頭の中で語り合っている。
 「おめでとう」には、相手があって―自分が相手の場合もある―様々な場面の中で、前を向き、前に進もうとする希望を持っている。生きる上で希望が必要なのだ。希望を持ちたいのだ。
 いま時代はけたたましい。新型コロナウイルスで施設は沈んで稼働率が問題になり、異常気象が世界中のあちこちで初めての現象を起こし、施設にも現れた。隣国の野望が、この国の日常を揺るがし、イスラエル、ガザでは、見境えなく殺し合い、ウクライナは不利な戦況の中で命を掛けて戦っている。突然一方的に攻め込んだあのプーチンの正義とプーチンを支持する国民の正義。いったいウクライナが何をしたというのか。破壊され殺され、家族も家も失っている。憎悪と空しさと悲哀を持ちながら何もできずに立ち尽くす。過去日本でも同様のことをやったり、やられたりしている。それらは世界の歴史の中で繰り返されている。それが人間の姿なのだろう・・・か。思考が停止する。
 暫く立ち止まりながら、年齢を思い、残存能力を確かめ、絶望的な状況を後に回して、希望の方向に進もうとしている。そこには大谷翔平がいるではないか。日本の誇り、人類が生きる理想の姿である。
 新年への思いが、窮屈で重々しくて、ふさわしくないが、昨年の体調がまだ一部尾を引いている。昨年といっても過ぎたばかりのこと、あの猛暑の連続と激しい気候の温度差に付いて行けなかった。小さい頃から極端な変化に弱いところがあり、春秋のような平温が好みで、人生も又平穏が望みだが、そうはいかない。

 長く生きてきて自分だけではない、社会も環境も著しく変わった。養老川の支流田尾川には、よく釣りに行った。きれいな川の水だった。海も空も空気も透明な感じがしていた。1960年頃から、田尾川の上流にゴルフ場ができると、好きなアユが釣れなくなった。本流に行くも高滝ダムができると、アユは遡上できなくなり、ダム上流に放流されるアユを求めていった。天然遡上ができない養老川はふる里の香りを失っていく。更には生活排水と産業廃棄物投棄に関る汚染の不安に戦き、反対運動を起こしたが、自然力を弱めた養老川になった。近年渇水や集中豪雨によって、森や土壌と共に川は大打撃を受けて、深い淵は埋まり、浅瀬は砂に覆われて、生物の棲み辛い川になりつつある。そこは人間も住みたい所とはならないで、次第に人口を減らしている。
 1995年高滝ダム完成で、湖畔に美術館、湖中にモニュメントがオープンした。モニュメントは、生命の循環をコンセプトとして、清流に棲むカゲロウやヤマセミをモチーフにしている。「水と彫刻の丘」(現在湖畔美術館)は、自然と人工の調和をテーマとして、湖面を渡る風や光りに敏感な作品を創ろうとした。又建物から水車展望塔一帯にはエコロジー思想による様々な仕掛けを用意したが、道半ばで実現に至らなかった。無念さは今も残るが、ダム湖中には、水質、水量の不安や土砂の堆積で生き辛くなったカゲロウやヤマセミなどがいのち(・・・)のシンボルとして、しっかりと建っている。

 1986年「風景を巡るパフォーマンス“サティ列車で行こう”」が、小湊鉄道を活用し実現した。ギャラリーみやこ(五井東口、クレイン設立を機に廃業)に集まる芸術家たちのボランティア行為であった。八幡、五井、姉崎の海を埋め立てたコンビナートは、科学技術の結晶。そこから房総半島中央部を更に南下した養老川上流に至るのが小湊鉄道。首都圏中央部から僅か1時間余りの緑豊かな自然とローカル鉄道、そこに環境総合芸術を持ち込んで、市原市の可能性を問おうとしたのが「サティ列車で行こう」であった。自然と文明社会が織り成す光景が房総半島に展開されたのである。自然と文明社会を考えると、いま現在、ウクライナ、ガザの文明社会の中で、科学技術が、自然と人工物を破壊し、人間と動物の命を奪っている。地球の汚染、破壊、温暖化、全てが人類の愚かな行為に依る。そして人工知能(AI)が効率的に通常化され、更に進化した生成AI(ChatGPT)なるものが出現している。我々は人間とは何かを考えなくてはならない事態になったのである。
 ここでゴリラの研究家で前京都大学総長であった山極壽一氏の言葉を紹介したい。「私たちは言葉というロゴス、論理によって動く場合と、芸術やスポーツのように感性や身体で動く場合があって、二つが複雑に交り合いながら決断している。」。次には、生成AI(ChatGPT)についても以下のように述べている。「ChatGPTを使えば使うほど、人間は情報によって動く機械になるだろう。脳の中で、感情の部分と知識の部分は分かれているが、だんだんと情報に浸蝕されていき、情報にならない感情はChatGPTでは使えないために無視され、判断材料にはならなくなる。私たちが生きた人間である証拠は、感情や生物的な感性でつくられる部分にあり、共感もこの感情によって生み出されている。」。山極氏はこのように、人間には感情があって共感し、助け合っていける存在であると述べている。同時に自らつくった科学技術に振り回されるなと警告を発している。
 
 ここまで、自分の足元と世界の今を大雑把に掴み、自然と人工物を破壊する人間(例プーチン)の非道、愚かさに触れ、自然の強さと弱さにも触れながら、山極先生の言葉を借りて、人間とAIの在り方にも触れた。普段から自分の心の中に去来している事象を簡略に記した。

 終わりに広井良典先生の「地球倫理」を紹介したい。昨年、先生から「無と意識の人類史」(東洋経済新報社)を贈って頂いた。副題に「私たちはどこへ向かうのか」がついている。帯には、新型コロナウイルスの出現。大規模災害をもたらす気候の激変と温暖化。成長拡大。地球規模での定常化時代に向かう現在、人類が「無」をどう捉えているか。・・・などの言葉が並ぶ。「地球倫理」は、この著書に出ている私の好きな言葉、以下にそれを記したい。
 
地球倫理
① 地球資源・環境の「有限性」を認識し、
② 地球上の各地域における風土の相違に由来する文化や宗教の「多様性」を理解しつつ
③ それらの根底にある自然信仰を積極的にとらえていく

 我々が希望を失くさないための先生の希望である。

鶴心会理事長 三好 敏弘

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