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クレイン・トータス新聞

トータス新聞1面記事

閉じこもりは身体機能低下の黄色信号

2022-11-01
新聞
 今年の夏は一段と暑かったですね。「酷暑」と言われたように外に出ると日差しは皮膚にささり、日陰でも汗が止まりませんでした。
 コロナ感染症の予防もあり外出の時間を短くし、友人との食事を控えたり、旅行も行かず自宅で過ごすことが増え、運動の機会や楽しみも減った方が多かったのではないでしょうか。私も暑くて外に出る機会が減り、昼夜クーラーのある部屋で過ごしたことで、体力低下を感じました。介護保険を利用されている利用者様やご家族から、「歩けなくなった」「ずいぶんボケてきた」「暑くて今までのように食べられない」と体力だけでなく、記憶力などの認知機能や食欲低下などを聞くことが増えました。「フレイル」の状態です。フレイルとは、年齢を重ねることで、心身の活力(筋力、認知機能、社会とのつながりなど)低下した状態のことを言います。フレイルは「虚弱」を意味する英語「fraily」を語源として作られた言葉です。年齢を重ねたことで多くの人が健康な状態から、このフレイルの段階を経て、要介護に陥ると考えられています。健康な状態と介護状態の間のことです。
 89歳の義母も数年前にフレイルから要介護になりました。
 いつもは田んぼ9枚ほど先の友人宅にお茶を飲みに行っていました。数年前の夏は今年ほど暑くはありませんでしたが、高齢者には体に堪えるようで、日中は暑くて外には出られず、クーラーの効いた部屋でテレビを見て過ごしていました。ある日、義母の部屋に行くとクーラーの温度は17度、窓を開け「暑い、暑い。一つも涼しくない」と、うちわで扇いでいました。別の日は服を4枚着て体温が38度に。気温や状況に合わせた判断ができなくなっていました。認知機能の低下でした。
 暑さから外に出ることがなく、近所の友人とお茶を飲みながら、大きな声で笑っていた時間がなくなり、何も考えずに一人でテレビを見て横になっているだけです。暑さからそうめんばかりを好み食事量も低下し、家族は仕事で日中不在でしたから、一人でぼんやりと過ごしていました。今考えるとこの環境が母の心身の状態を低下させてしまったのです。まさしく部屋に閉じこもりの生活で虚弱になってしまいました。
 物忘れも進んだ母の状態を心配した母の友人たちが、毎日交代で電話をしようと相談くださり、毎日母の話し相手になってくださいました。一人の方は朝・晩に電話をくださり、同じ会話ですが、大きな声で冗談を言いながら大笑いして電話をしています。母の嬉しそうな表情、近所の方に感謝でした。また、外に出る機会が減り、部屋に閉じこもっていたので下肢の筋力が低下してきました。体のあちこちの痛みの訴えが増え、夕方過ぎると「病院に連れて行って」と言うようになり、薬局に薬を買いに行くことが増え、当番医に受診に連れて行くこともありました。ゆっくり話をする時間がなく、変化に気づくのが遅かったのです。筋力が低下し、社会とのつながりが減り、認知機能が低下すると、介護状態に加速します。
 予防策として、介護保険を申請し施設で短期間のショートステイを利用しました。施設でも洋服を4枚着て部屋に閉じこもっていましたが、入所している方が「部屋に閉じこもっていたらいけないよ。出ておいで」と利用者を集めてトランプをしてくれたのです。部屋から出て他の利用者と丸くなって会話をし、トランプも参加しています。長男や嫁の言葉より、同年代の方の声はよく届きます。本当に助けられました。高齢になると人との交流、友人や知人、近所の方のつながりがとても大切だと感じました。
 地域には以前、婦人会や老人クラブ等の集まりがあり、地域の方との交流がありました。高齢化や最近はコロナ感染症予防もあり、地域での行事も、集まりも近所での井戸端会議ですら人と会う機会が本当に少なくなりました。自宅に閉じこもっている高齢の方が少なくありません。少子化で高齢化率が45%を超えている地域もあり、今後地域での支えあいが必要になります。出来ましたら、近所にお住いの方や友人・知人の生活状況を見て、心配な時は声をかけてあげてください。挨拶だけでも喜ばれると思います。家族以外の人の声かけがとても力になります。
 地域によっては住民主体の互助サービスがいろいろあります。市原市には高齢者福祉で小域福祉ネットワークや安心生活見守り支援事業、ふれあい給食サービスの宅配弁当があり、安否確認も行ってくれます。また、介護保険の認定をお持ちの方は介護保険(通所介護、通所リハビリ、ショートステイなど)のサービスを相談できます。詳しくはお近くの地域包括支援センターや居宅介護支援事業所にご相談ください。
 居宅介護支援事業所は住み慣れた地域で自立した日常生活を営むことができるよう支援することを目的として援助しています。お気軽に声をおかけください。
 この先、認知症になる人の人数よりフレイルになる人の人数が増えると予測されています。フレイル予防は日々の生活習慣に繋がっています。自分の健康は自分で守れるように、今から予防をすることが大切です。
①よく噛んでしっかり食べ、塩分控えめでバランスの良い食事を摂りましょう。1日の食事の量を手で表すと、野菜やきのこや海藻などは両手、タンパク質(魚や肉類、玉子、豆腐)は片手が目安です。
②体操や散歩、踵の上げ下げなどいつもより10分多く体を動かしましょう。外出の機会を作りましょう。
③人との関わりを持ちましょう。趣味やボランティアなど自分に合った活動を見つけましょう。1日の中でできたこと・楽しかったこと・感謝することなど小さなことでも良いことを思い出しましょう。笑顔を作りましょう。
 年齢を重ねるとできないことが増えてくるかもしれませんが、それは皆さん同じです。家族や周りの方に頼りながら、できることをやり続けられるよう心身の活力を維持し、元気に年を重ねましょう。
居宅介護支援事業所トータス
所長 大塚 利恵



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