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クレイン・トータス新聞

トータス新聞1面記事

ホモサピエンスの昏迷乱擾

2022-07-01
新聞
 近頃、物事がやたら不安に感じるようになってきた。年のせいで気弱になったのか。それとも剣呑症という生来的なものの発出によるものなのか。いやそれは最近よく耳にする自律神経の失調からくるものなのか。正直、私には分らない。いずれにしろ私自身が問題になってきているのは疑いないところだが、それにしても身の周りで起きる小さな事件から、民族間や国家間の大規模での争乱まで、所謂人の営みに伴う争い事にキリがなくなっている。身近なところでは、このところとみに発生している親族間における悲惨な暴力事件、親が子を、子が親をと、見るに聞くに堪えない事象が多発している。また国際的な事となれば、何と言っても世界の人々を震撼させているロシアのウクライナ侵攻である。他国間のことと傍観など許されない諸問題を含んでおり、成行きによっては抜き差しならぬ事態にも発展するやも知れず、我々にとって現今における一番の心配のタネである。もちろん時として途方もない自然エネルギー活動も大脅威であるが、それに勝ると劣らず我々ホモサピエンスの無軌道で無慈悲な暴力性程恐ろしいものはない。一方、その反面窮する人々へ救いの手を差しのべる利他の精神に溢れるホモサピエンスも少なからずおられる。複雑性にとみ、怪奇的であるホモサピエンスは厄介な動物の一群には間違いない。一体ホモサピエンスとは何者なのか。どこで生まれ、何処へ向おうとしているのか。一介の老身には余りにも大きなテーマで、深堀など出来る由もないがちょっとだけお触りをしたくなった。ひとつの学術的な情報によれば、遺伝的な証拠や化学的な証拠からして、20万年前から10万年前にかけて主にアフリカで現生人類へ進化したのち、6万年前にアフリカを離れて長い年月をかけて世界の各地へ広がり、先住のネアルデルタール人(旧人)やホモエレクトレス(原人)などの初期人類集団との交代劇を繰り広げながらヒト属へと転化したようである。そしてこのヒトとして大脳の著しい発達によって、言語、思考、理性の能力、また文化的創造の能力を有することともなった。このようにホモサピエンスなる私達の祖先が誕生し、その後世界各地へ拡散しながら留まった地での集団化がなされ、その間には離合集散を繰り返しながらの紆余曲折を経て、ヒトから人類への塊となり、この星の頂点に君臨するようになったと謳われている。このホモサピエンスの進化は46億年の地球の歴史からするとほんの僅かな時間、例えて言うならば1年間というサイクルに置き換えて見た時、大晦日の最後の最後の何分間位との説もある。このように何かに取り憑かれたようなホモサピエンスの進化のスピードは現代社会における混迷乱擾を生み出しているように思えてならない。自由民主主義的国家においては個人の権利を重視する偏重的な社会の仕組み、一方社会民主主義的な国家では独裁者による一方的上意下達による社会体制と、体制の違いはあれどそれぞれの極端性があまりにも何でもありの今日状況、即ち混迷乱擾の世界を作り出している要因ではと訝しがらずにはいられない。
 ホモサピエンスとはラテン語で「賢い人間」或いは「知恵のある人間」という意味だそうである。確かにこれまでの科学の目ざましい進歩をみればヒトによる理性の結集によって成し遂げられたところが大方であると思うが、他方今日まで連綿と続く殺戮の愚行もまた現実である。果たしてこの矛盾に満ちたヒト様の世界は如何と成り行くのか、凡庸な私には思いもつかない。
 ところで大上段に構えての蘊蓄もいいが、自身のホモサピエンスとしてのあり方はと問われれば、先にこちらの方が筋ですと申し聞きするより他にない。冒頭に記したように恐らく現状は混迷乱擾ビトになりつつあるのは間違いないところでは…。
 身体の衰えは確かに進んでいる。朝、起きようとしてもすぐに立ち上がれず、足腰の状態を探りながらの起動となる。そして夜の就寝時には必ずどこかのパーツが痛み出す。肩、上肢、腰、下肢のいずれかである。加えて時として目はかすみ、耳も遠くなってきた。テレビが騒がしいのか、相棒が怒鳴っているのか見当がつかないことも茶飯事化しつつある。こればかりではない。心や脳の方もそれとなく年の積み重ねを感じている。
 リアルかバーチャルなのか区別がつかないような事も出現している。記憶もいよいよ怪しくなってきた。特に般若湯を頂いた時がいけない。次の朝、昨夜のことがすっかり抜け落ちている。これはタイトルではなく、単にボケが始まったのではと憂いと恐れにおののいている私であるが誰しもがこの世に生を受けたからには、損得なくその寿命を全うすることを祈らずにはいられない。

特別養護老人ホームトータス
施設長  齋藤 武


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