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クレイン・トータス新聞

トータス新聞1面記事

接遇について

2020-06-01
新聞
 年が明けても新年度が始まってもすっきりとしない、何かここ数カ月間、空白の時を過ごしたような気がしています。昨年の暮れ頃から新型コロナウイルスの話題を耳にするようになり、対岸の火事と思っていたのもつかの間、4月には緊急事態宣言が発令され、通常であれば感染症対策が落ち着いてくる時期ですが、更なる対応対策をすることとなりました。幸いなことに皆様の取組とご協力のおかげでCTGグループにおいて感染者は確認されておりませんが、ご利用者およびご家族の皆様におかれましては面会の制限へのご協力や、行事活動の中止等々、大変辛い思いとご不便をおかけしてしまったことを心苦しく思います。
 さて、この緊急事態宣言により様々な活動の自粛が求められ、毎月開催している職員向けの研修会も行えておりません。5月の研修講師として依頼を受けていたのでこの場を借りて研修テーマ「接遇について」を述べさせていただきます。
 まず、なぜ介護現場において接遇が必要なのでしょうか。当たり前の話かもしれませんが順を追います。介護職とは産業分類において3次産業に属します。3次産業とは1次産業,2次産業のどちらにも当てはまらない産業で、形のない財を提供する非製造業を指します。目に見えないサービスや情報などの生産を行う産業であり、知識や技術を提供する専門家はサービス業と分類されます。つまり介護職は専門的サービス業といえます。
 介護職とは要介護状態にある方の身の回りのお手伝いをする仕事です。その業務内容は、サービスを受ける人たちの生活そのものです。言い換えると人として生きることに関わる、即ち人生に関わる仕事と言えます。大げさではなくこれは究極のサービス業です。物が相手ではありません。その日その場限りの仕事でもありません。様々な事情を抱えている高齢者に接する仕事です。しかも生活の場で深く接するのですから接遇は絶対に必要不可欠なのです。
 では、接遇とはいったい何を指すのでしょうか。接は「近づく」遇は「もてなす」という意味を表します。接遇とは、おもてなしの心を持って相手に接するという意味をもちます。人と人が接触しお互いが気持ち良くスムーズにその目的を果たすための心構えや方法です。つまり相手がいるからこその接遇なのです。接遇とは相手がいて、そしてお互いの為にあるものなのです。そしてその接遇を評価するのは自分ではなく、相手であるということも覚えておいてください。
 我々は常にプロ意識を持って一貫した接遇マナーを身につける必要があります。逆に接遇マナーの行き届かなさから、組織全体のイメージダウンにも繋がります。一人ひとりの言動が全ての職員に、そしてご利用者に影響してきます。介護現場はチームケアです。常に一緒に働く人同士の心配りがなければ円滑に業務は進みません。つまり、ご利用者に対してだけでなく職員同士がお互いに気持ち良く働くためにも接遇は必要なのです。そして接遇の対象者は目の前にいるご利用者だけではありません。そのご利用者のご家族や関係者の存在を忘れないでください。ご利用者を一番大切にされている方です。ご家族の目が届かない所でサービスをご提供させていただいているからこそ、我々は信頼をしていただき、安心してご利用していただけるように努めねばなりません。日頃から丁寧な接遇によるサービスをご提供できることにより安心と信頼が生まれるのです。
 さて、ここまで接遇の必要性について述べてきましたが、ここからは接遇の基本についてになります。
 
接遇の基本 
①挨拶
 挨拶は全ての始まりであり終わりです。様々な人との関係の中で行われるあいさつや言葉づかいは、印象だけでなく職場や施設全体の評価にも影響します。恥ずかしいからという理由で挨拶をせず目も合わせずに淡々と業務だけをこなしていたのでは、いつまでもご利用者との交流は生まれません。心を開く最大のきっかけである挨拶を癖づける事が接遇スキルをアップさせる第一歩です。そして声をだすことが大切です。心の中で「おはようございます」と念じても相手には聞こえません。
 
②適切な距離感
 親しみと馴れ馴れしさの違いを理解する必要があります。親近感を持ってもらうことも大切ではありますが、だからといって馴れ馴れしくするのはご利用者あるいはご家族の不信感や誤解を産み、後々クレームや悪評となることもあります。言葉づかいは原則として敬語を使用しましょう。年長者と接するわけですから当然敬語が基本となります。あくまでご利用者の気持ちに寄り添う、という姿勢を崩さないようにして一定の距離感を保つことが大切です。適切な距離感を保つためには、正しい言葉づかいと適切な言葉がけです。そしてその丁寧さの中に親しみを感じてもらうことがプロとしての接遇です。
 
③感受性(理解力)
 他人の痛みとはその立場にならなければ分かりません。そのため自分がその立場だったらと想像してみることも必要です。そしてどういう心境で何を求めているのか。その時自分が同じ立場だったらどうされたら嬉しいでしょうか。何をされたら不快に感じるでしょうか。自分の主観だけでなく相手の心理を理解しながら考えてみてください。
 
言葉づかい・敬語について
 自分は過去アルバイトを含め様々な職を経験してきましたが、やはりどの業界でも敬語での会話は必須でした。そして間違いなく介護という仕事においても敬語は必須の技術です。前述した基本②でも適切な距離感を保つためには敬語が適切であると説明させていただきました。しかし、人によってはガチガチの敬語だとご利用者との距離を縮めることができないという理由から馴れ馴れしい言葉づかい、所謂タメ口で接しているケースを見ることがありますが、自分は必ずしもそうは考えていません。本人は親しみを込めてタメ口を使っていたとしても、相手が同じようにタメ口に親しみを感じるかどうかはわかりません。ところで、茶道や武道などの芸道の修行過程のひとつとして「守破離」という考え方があります。まずは型を「守り」身につける。続いて型を「破り」応用する。その上で型から「離れ」自分のやり方を見つける。というものです。端的に言えば、まずは基本を押さえ崩すのはそれからという訳です。仮に守破離でいうところの「守」を極めたうえで、目的あってあえて敬語を崩してしているというのであれば技術として見ることができますが、これは超応用技術です。基本の接遇ができていないまま実行してしまうと成立しません。「できないから崩れている」と「できるけれどもあえて崩す」では全く違います。ですから何事も基本をしっかりとできるようにしてください。
 そして敬語でも距離を感じさせないような接遇ができることが望ましいです。たしかに過剰にへりくだった言葉づかいは必要以上に気を遣わせてしまう場合もあったり、家庭的ではなくお客さま感覚を与えてしまい他人行儀になってしまうこともあるとは思います。しかし、だからといって言葉づかいだけがそう感じさせてしまう要因ではありません。恐らく距離を縮めることができないという方は表面上だけの敬語になっているのではないでしょうか。言葉だけでなく、表情や目線、声のトーン、しぐさなどの非言語コミュニケーションを適切に組み合わせることが重要です。明るい声で笑顔で相手の目を見て…これだけで印象はかなり変わります。敬語とは読んで字の如し相手を敬う言葉です。尊敬の念が伴ってこそ敬語が成立するのです。ただただ定型文を読み上げるような形だけの敬語では冷たく感じられてしまうことでしょう。
 言葉はあくまでもコミュニケーションツールです。ツールは使う側の使い方がとても重要です。敬語やタメ口を使うにしても、「何のためにこの言葉を使うのか」「どうしてこの言葉でないといけないのか」を常に考え、意識することが大切です。かけられた言葉によって、その人が自分が大切にされている、愛されていると感じられるように、優しく思いやりのある言葉づかいを心がけてください。
 生活の場の支援という介護現場においては職員とご利用者の距離が近くなるからこそ、タメ口などの不適切な言葉づかいを含め、接遇やマナーがおろそかとなってしまう場合もあります。ご利用者を尊重し、求めているケアを提供したいと考えて行動すると、自然と丁寧な接遇が生まれてくるはずです。相手の立場に立ち、相手にとって一番心地よい距離感や言動を考え、実践できるよう心がけてください。
 
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